阪神・高濱の人的補償移籍に見るFAの怖さ
迂闊にFA補強すると芽を摘まれるということです!(フモフモさん風)
強い言い方をしてしまいましたが、まったくそうだと思います。今回のコバヒロのFA移籍とそれに伴う高濱の人的補償での移籍は様々な要素が重なり、とても劇的なものになってしまいました。そして、それゆえにFA補償の問題であったり、留意点だったりが浮き彫りにされたと僕は思っています。
どこが劇的なのか?
事の発端はもちろんコバヒロのFA宣言。当初はメジャーを目指しての宣言でしたが、思うようにいかず、結局メジャーを断念することになりました。それが1月末にずれ込んでしまったのが一点。
FA移籍元の球団は、移籍先の球団から選手か金銭をもらうことができます。これは戦力の偏りを防ぐための決まりです。ただし移籍先の球団が定めた28人の選手は指名することができません。これをプロテクトと言います。
このプロテクトには、コバヒロのFA宣言以降に阪神に移籍した選手(藤井と新井良)も入れなければなりませんでした。プロテクトに入れなくても守られるのは新人選手だけで、今オフに移籍した選手もプロテクトに入ってなければちゃんと指名できてしまうのです。もちろん阪神側としてそれは避けたい。これで2人分は埋まってしまったのが二点。
コバヒロと対照的に、メジャー移籍をきっちり決めたのが同僚の西岡。押しも押されもせぬショートのレギュラーがいなくなってしまったのです。ロッテは荻野貴をショートにコンバートするなど手を打っていましたが、なかなか頭ひとつ抜け出す選手が出てこない。そうこうしているうちに今江もケガをしてしまった。金銭補償をもらうつもりだったフロントが、これによって人的補償にスイッチすることになったのです。三点目。
そして何よりも、キャンプイン後の高濱のブレイク。正直、公式戦でもないのにブレイクとは言いがたいのですが、打棒で活躍し始めたのは事実。このタイミングと高濱自身が、ロッテの穴にぴったりフィットしちゃったんですね。
この四点が揃ってしまったのが今回のFAに伴う人的補償です。人生って何がどう及ぶかわからないですね……。
プロテクトしなかった阪神は責められない
プロテクトリストの提出は2月10日。まだキャンプが始まって少しのところです。この時点で高濱の活躍を予期するのは難しい。昨年まで1軍出場なし、ウエスタンリーグでも39試合に出場し打率わずか.195という選手を28人の枠に入れるという判断は、なかなかできないでしょう。無理もないと思います。
ただ、FA補強というのはある意味で安易な選択です。コバヒロはBランク以上の人的補償が必要な選手。「出来合いの選手」を獲るということは若手の芽を摘むリスクが生じます。一昔前の巨人がまさにそうでしたね。結果論ではありますが、今回はそのような形になってしまった。リスクを承知の上で補強を選んだわけですから、阪神側は「もったいない」と言える資格はありません。
本当にFAは必要か。現有戦力の下積みは期待できないのか。フロントには見極める力が求められます。
海外移籍の場合は……?
余談かもしれませんが、メジャーへのFA移籍の場合は、移籍金も人的補償もありません。つまり移籍元の球団に直接的なメリット・見返りはないのです。これはどうにかならないのですかね……。
お金や選手をお返しにしなければならないとなると移籍の流れが鈍くなり、選手の希望が叶えられない可能性も出てきますが、それでも何らかの見返りはあって然るべきだと思うのです。そりゃメジャーの方が格上なのかもしれませんが、同じプロチーム同士なのですから。そこら辺がしっかりしてくれば、ポスティングでモメることもなくなる気がします。
サッカーでも岡崎の移籍で清水エスパルスとシュツットガルトが一悶着を起こしたばかりですし、スポーツ全体で海外移籍の制度は今一度見直されるべきなのだと思います。